橘蓮二さんの新刊を読んだ。



橘さんは落語を聴くようになって知った写真家さん。
HPで、パンフレットで、「あぁこの写真も橘さんなのか…」とよく目
にする方で、落語関連以外に動物の写真集なんかも出ています。

被写体とカメラマンというのは切り取られたワンショットの中に
関係性も大きく出るものだと思う。
このカメラマンだから見せた表情があったり、この人だからこそ
撮ることが出来た一枚というのがあるんだろうなと。

高座を撮るというのはまた少し違っていて、客席に向けて演じて
いるのを邪魔にならないよう撮影しているので普段私が客席から
観ているのとは別の世界が写っているようで時々ハッとする。

写真と文章の両方を手がけた今回の本の中で印象的だったのは
演者さんとの関係で、波長が合うというのは撮影を重ねていると噺
の撮りどころが分かっているということではなく、噺家さんが表現し
たい気持ちを形にするという気持ちで撮影に臨んでいるという件だ。
こんな事を引き合いに出しては失礼なのだが、自分のペットを誰よりも
可愛く撮影できると思うのとは訳が違う。真剣×真剣の勝負なのだ。

もう一つ思ったのは、お辞儀をしている写真が多いこと。談春さんが
家元のお辞儀は綺麗だと言われていて、自分でもあんなふうにできたら
いいなと言っていたのを聴いてから、高座に座っている人のお辞儀を
気にして見るようになった。お辞儀ひとつにしても本当に人それぞれで
スピードや手の付き方という見た目もあるけれど、気持ちが込められて
いるように感じられるお辞儀で締めくくられた一席はとても気持ちが
いいものなのだ。
写真の中のお辞儀している噺家さんは顔はもちろん見えず頭や背中
があるのみだけど、そこからは演りきった(出しきった)ような清々しさ
(俺はヤったぜっというものでは決してない)があるような気がする。

橘さんが18年間見続けてきたもの、大切な思い出や印象深い言葉が
惜しみなく紹介されていて、そういうものを見せてもらえるのはどんなに
嬉しくありがたいことか。押入れから出てきたお菓子箱を開けたら、
貴重な写真が出てきてエピソードを聞かせて貰っているような感じの
優しさと温かさが詰まった1冊に感激した。