先日、新聞で気になる記事がありました

ホメオパシーが保険適用で治療を受けられていた
英国で効果を全面否定されたと言うもの。



2010年7月31日付 朝日新聞東京本社朝刊beから
「問われる真偽 ホメオパシー療法」


編集部のブログ「こちらアピタルです。」より
「ホメオパシー療法、信じる前に疑いを」


「日本ホメオパシー医学協会」


読売と朝日の詳報記事のブログ





ホメオパシーは穏やかな効き目があり副作用も少なくペットにも
使える良いものという認識があったので驚きました。

効果を実感している方も多くいるのでしょうが、様々な検証がなされ
出た結論はなかなか覆りそうにありません。
公的医療がら外すよう政府へ勧告がされた英国では今現在治療方法が
選択出来た方がよいという見解から保険適用は続行されています。



先日読んだ本によると、こういった情報発信としては学会発表と
論文報告があり、学会発表というと正式なものというイメージがあるけれど
科学的評価としては不十分で、研究の価値は信頼性や重要性についての
審査を経て、専門誌に論文として報告されて初めて科学的評価の対象に
なるのが普通なんだそうです。
今回のショッキングな情報も論文発表なので信頼性は高いと思われます。


ただ、薬の代わりはならくても気持ちが上がるアイテムとして
取り入れるのならマイナスにはならないのではないかな〜と
個人的には思います。



先日の腫瘍の記事にも書いた通り、どんな情報でも将来新たな事柄が
判明し、結果が覆る可能性があると言うことを覚えておかなければと
思いました。

自分の信じているものを否定されるのは受け入れがたいでしょうが
ニュートラルな状態で様々な情報に耳を傾け、その都度自分なりに
考えてチョイスしていけたらいいと思っています。

そして、治療にいろんな選択肢があるならば様々な角度から検証して
ひとつの治療だけでなく、(ケースバイケースですが)合わせ技や
段階を踏んでのアプローチなど専門家と相談しながら一番良いと
思える治療の選択が出来ればと思います。



*追記はリンク切れになった時の為、記事のコピーです
問われる真偽 ホメオパシー療法

気が遠くなるほど薄めた「毒」を飲むことで病気を治す、という欧州生まれの代替医療ホメオパシーが「害のない自然な療法」と日本でも女性層を中心に人気が高まりつつある。だが、この療法が公的医療の一角を占める英国は今年、議会委員会がその効果を全面否定、公的医療から外すよう政府に勧告した。日本でも裁判が起こされるなど、その効果を巡ってホメオパシーは批判対象にもなってきている。(長野剛)


◇ 自然派ママの心つかむ ◇

 「本当にいいものだから、みんなに知って欲しいんですよ。(中略)病名のつかない症状やメンタルな問題まで対応できる自然療法なんです」

 女優の沢尻エリカさんはホメオパシーについて、講談社のファッション誌「グラマラス」5月号のインタビューでそう語った。作家の落合恵子さん経営のクレヨンハウスが出す育児誌「クーヨン」も2007年以降、ホメオパシー関連の記事を掲載している。

 クーヨン編集長の吉原美穂さんは「自然な子育てに関心が集まり、化学物質が入った医師の薬に不安を持つ人が多い」と、育児の最中の母親らがひかれる理由を説明する。

 国内の代表的なホメオパシー業界団体のひとつ、日本ホメオパシー医学協会(東京)によると、ホメオパシーは今年だけで20回近く雑誌などで紹介され、利用者は国内に数十万人はいるとみられるという。

 ホメオパシーの原理は200年前、ドイツの医師ハーネマンが確立。彼がマラリア治療薬を飲んでみたら、マラリアと同様の症状が起きた。そこで「病気と同じ症状を起こせる物質なら、病気を治せる」という着想を得た。

 似た症状を起こす物質が、似た病気を治すというので「同種療法」と呼ばれる。一方、西洋医学の場合は逆に、病状を消すための治療を行うので「異種療法」とされる。

 ホメオパシー治療は「レメディ」と呼ばれる丸薬のようなものを飲んで行う。「症状を起こす毒」を、よく振りながら水などで薄め、砂糖粒に染み込ませたものだ。薄める毒は、毒草のトリカブトや昆虫、鉱石など約3千種類。

 ホメオパシーでは「薄めるほど効く」ともされる。その薄め方は半端ではない。一般的なレメディでは、10の60乗(1兆を5回掛け合わせた数)分の1に薄める。

 ここまで薄めると毒の物質は、事実上もう入っていないが「薄める時によく振ることで、毒のパターンが水に記憶される」と、協会会長の由井寅子さんは解説する。

 「自己治癒力が病気と闘っている時に現れるのが病気の症状。西洋医学は症状を緩和するが、治癒はさせない」。ホメオパシーで治せる病気は精神病から皮膚病まで多種多様で、がん治療も可能かと聞くと、由井さんは「そうです」と力強く答えた。

◇ 効果否定、「被害」訴えも ◇

 しかし、ホメオパシーは本当に効くのか。

 ニセ科学に詳しい大阪大学の菊池誠教授は「分子が1個も残らないほど希釈するのだから、レメディは単なる砂糖粒」とした上で「最大の問題は、現代医学を否定し、患者を病院から遠ざける点にある」と指摘する。

 今年5月、ホメオパシーが効かず「乳児が死亡した」という損害賠償請求訴訟が山口地裁で起こされた。乳児を自宅出産した母親が、助産師を訴えた。訴えによると、乳児が生まれた昨夏、助産師は一般に多く使われているビタミンKを乳児に投与せず、代わりにホメオパシーのレメディを投与。乳児はビタミンK欠乏性出血症と診断され、約2カ月後に死亡したという。

 インターネット上にも「被害」の訴えは多い。

 6月には都内の医師のブログに「悲劇を繰り返さないため何かできないものでしょうか」と訴える書き込みがあった。血液のがんの悪性リンパ腫で友人を失ったという人物の書き込みで、友人はホメオパシーでがんを治そうと通常の治療を拒否。結果、病院に運び込まれた時には、すでに手遅れになっていたという。

 このブログを開設する大塚北口診療所の梅沢充医師は「自分が実際に診た人のなかにも、ホメオパシーに頼った結果、手遅れになったがん患者がいる」と証言する。

 梅沢さんは患者を病院から遠ざける一因に「好転反応」という用語を挙げる。

 好転反応について、ホメオパシー医学協会の由井さんは「症状は有り難い」との持論で説明する。ホメオパシー治療では、病気の症状がかえって激しく出ることがあるが、それは治療で自己治癒力が向上したことの証しの「好転反応」で、有り難いことなのだ、という理論だ。こんな極論を信じた結果、患者は症状が悪化しても「良くなっている」と思いこみ、病院に行くのを拒否する、というのが梅沢さんの指摘だ。

 ホメオパシーの効果については、玉石混交の論文が多数書かれている。05年にスイスのベルン大学のチームが、110件の研究から極めて良質な8件を選び出し、ホメオパシーの効果の有無を総合判定する論文を英医学誌ランセットに報告した。チームは、良質な論文群を包括的に分析した結果、「ホメオパシーはプラセボ(偽薬)効果に過ぎない」と結論づけた。

 偽薬効果とは、薬効が全くない物質でも、本人が「効く」と信じて飲めば効くことがあるという効果のことだ。つまり、ベルン大の結論は「ホメオパシー自体には、治療効果は全くない」ということを意味している。

 さらに今年2月、英国議会下院の委員会は、ベルン大の報告など多くの報告例を調査検討した結果「ホメオパシーには偽薬以上の効果はないので、英国の公的医療の対象から外すべきだ」とする270ページをこす勧告を英政府に提出した。効果がないことについては「再調査の必要すらない」とまで強調している。

 一方、日本の厚生労働省は今年、ホメオパシーを含む代替医療を現在の医療体制に取り込むことを検討するため、鳩山前首相の所信表明演説に基づき作業班を発足させた。

 がんの代替医療の検証を行っている埼玉医科大学の大野智講師は「日本の行政はホメオパシーを含む代替医療について、ずっと当たらず障らずの立場を続けてきた。効かないものは効かないということも、国は責任を持って情報発信すべきだ」と指摘する。

◇ 担当した長野記者より ◇

 この記事の掲載作業が終わった直後の7月26日、英国政府は、ホメオパシー療法への公的補助を続けると発表した。上記記事にあるように英国議会下院の委員会が、「ホメオパシーには偽薬以上の効果はないので、英国の公的医療の対象から外すべきだ」と勧告を出していた。英国政府は「ホメオパシーに医療上の効果がない」ことに関しては全く反論せず、「委員会の結論の多くについては同意する」としている。勧告に従わなかったのは「患者の選択の自由は、妨げられないから」などと説明した。



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ホメオパシー療法、信じる前に疑いを

東京本社科学医療グループ  長野 剛

「私はホメオパシーを使っています。実際に良さも悪さも実感しています」

そんなお便りを頂きました。7月31日付の朝日新聞土曜別刷り「be」に書いた「問われる真偽 ホメオパシー療法」に対してです。

ホメオパシーとは、欧州生まれの代替医療で、最近、国内でも流行りつつあります。記事は「効かない」ことを示す報告や、効くと信じて使った結果、重大な健康被害を受けた例があるとみられることを報じたものです。

ですが、お便りをくださった方のように「実際に使った。効いた」という意見は、インターネットでもよく見ます。

あえて言います。あなたが自身の経験で「効いた」というのは、客観的な根拠には全くなりません。実は、放っておいても治ったかもしれない。ホメオパシー以外で受けている通常治療のおかげかもしれません。

実際に「効く」かどうかを確認するには、検証が必要です。

効果の検証は、医学の世界ではダブルブラインドテスト(二重盲検試験)という手法が、最上の手法とされています。「医学の世界」というと難しげですが、特に難しい理屈ではありません。

テストの原理は、患者さんに本当の薬と偽の薬を使ってもらい、効果を比較するものです。このとき、患者さんが「偽の薬だからどうせ効かない」とか「本当の薬だから効くだろう」と思うと、「病は気から」の原理で効くものも効かず、効かないものも効く、ことが起こりえます。

これを避けるために、患者さんには使う薬が本当の薬か偽薬かは言いません。さらに、お医者さんが「この人は薬を使っているから良くなるはず」と思っていると、実際よりも病気が良くなって見えるかもしれないので、お医者さんも、誰が偽薬を使っているか知らずに、テストを行います。患者さん、お医者さん双方が「本物か偽物か」を知らないので、ダブルブラインドというわけです。

良くできた検証法でしょ?

「私には効いた」というご個人の感想では、絶対的な効果を保証するものではない、ということは分かって頂けたでしょうか。

さて、今回の取材では、ホメオパシー団体からも「効く」とする「学術的」な論文を頂きました。英国のホメオパシー病院で「ホメオパシーを利用した人の7割が健康が良くなった」とするものです。ダブルブラインドの観点からすれば、突っ込みどころ満載でした。

ダブルブラインドテストを経て「効く」となれば、ホメオパシーは本物です。記事中に紹介したのは、2005年に発表された英医学誌ランセットの論文。ランセットは医学雑誌の中でも最も権威ある論文誌のひとつです。「ホメオパシーの効果」に関するテストを紹介した論文を集め、「ダブルブラインドテストがしっかりできているか」などの観点でふるい分けを行います。その上で内容を分析したところ、「ホメオパシーは効いていない」と結論づけました。

この論文では、評価する手法についても検証しています。「こんなに厳密な評価だとすべてが否定されかねないのではないか」という批判を想定したのでしょう。通常の医療で使う薬を調べた時の手法を同様に検証したところ、「薬は効く」と判断。つまり、誰もが認める結果をもたらすことから、この論文の検証手法が正しいことを示しました。

また、このランセット以外にも、多数の研究報告を分析し、「ホメオパシーは効かない」と報告した論文があり、少なくない論文がホメオパシーの効果を否定しています。

記事中に、英国会の委員会が「ホメオパシーには効果がないので、公的医療の対象から外せ」と英政府に勧告をした旨も紹介しました。

実は、beの印刷が始まったあとの7月28日、英政府が議会の勧告に従わなかったことを知りました。すぐに英政府の26日付の回答文を読んだのですが、実は、「効果がない」ことには、全く反論がありませんでした。英政府としても「ホメオパシーの医療効果上の根拠は弱く、あるいは存在しない」という認識で、勧告に従わなかったのは「患者や現場医師らには選択の自由がある」ためとのことでした。

なんだか、納得いかないのですが、ホメオパシーの業界団体によるとホメオパシーは英王室御用達だそうなので、なかなか難しいのでしょう。英議会事務局の担当者によると普通、議会の勧告には60日程度で政府の返答があるようですが、ホメオパシー問題では半年近くかかったのもそんな特殊事情のせいかもしれません。勧告をまとめた英国会の議員さんたちは、かなり思い切った行動だったのでしょう。一種、尊敬を感じます。

くどくどと書いてきましたが、何が言いたいのかというと、大事なお命や健康を守るため、もっと注意深くなって頂きたいのです。

記事で紹介したようにホメオパシーで「治る」と信じたのに治らず、なくなるケースさえもありそうだ、ということです。なので、まず、ホメオパシーを含む代替医療に頼る場合、「信頼できるものかどうか」をしっかり考えて頂きたい、と思うのです。特に重い病気を患っていらっしゃる場合、「効かない」と思えたときにはすでに手遅れ、ということもありえます。

私がホメオパシーの記事を書こうと思ったのはかなり昔です。近所のお母さんで、お子さんの食物アレルギーをホメオパシーで治そうとしていた方がいたのです。「アナフィラキシーが起こってもホメオパシーで治すの? 死ぬんじゃないか?」と思いました。

具体的な「被害」の例がつかめず、なかなか書けなかったのですが、「be」の流行紹介のコーナー(be report)で書くという手を思いつき、6月中旬に着手した次第です。

ただ、もっと具体的な「被害例」を集め、ホメオパシー治療の実際について、もっと世間に発信したいと思っています。「治る」と信じた結果、かえって通常医療を受ける機会を逸してしまったような方は、いらっしゃいませんか? ぜひ、お話をお伺いしたいと思います。お心当たりのある方はぜひ、アピタル編集部(apital&asahi.com)=&を@に変えてください=までご連絡ください。よろしくお願いいたします。